温めても治らない冷え症
人間が本来持っている寒さ対策とは
さて、私たち人間を含めた動物は、寒いとブルブルと震えますね。
これは、熱を作る為に必要な行動です。
「筋肉を動かして発熱させる」事こそが、動物が本来持っている寒さ対策なのです。
ところが、現代社会では暖房器具、カイロ、靴下重ね履きなど、温める手段が無数にあり過ぎます。
「カイロをいっぱい貼ってるし、靴下重ね履きしてるのに、全然冷え症が治らない」
と、不思議そうにおっしゃる患者様もおられます。
人間の身体はうまくできていて、良くも悪くも、現在の状態を「学習」してしまいます。
筋肉を動かさなくても温まれる様な、楽な生活を続けていると、いつまでたっても冷え症は治りません。
このタイプの冷え症の解決方法は?
軽いウォーキングでもOKなので、無理のない範囲で、なるべく毎日体を動かすように心がけてください。
筋肉を刺激して、人間本来の発熱メカニズムを活性化させましょう。
血流改善・毛細血管の増加にも効果的です。
ご相談の多い冷えのぼせについて
「下半身は冷えるのに、上半身はのぼせる」
という症状を訴えられる患者様は、とても多いです。
そもそそも、どうして冷えのぼせは起こるのでしょうか?
冷えのぼせのメカニズム
「体温を保つ」ことは、動物や人間にとって、とても大切な生命活動です。
もちろん、体温が高過ぎても、低過ぎてもよくありません。
暑いと汗をかいて体温を下げようとしますね。
逆に、寒い時は、血管からの熱放散を最小限に抑える為に、血管が収縮します。
血管収縮は、自律神経によって行われます。
さて、究極の選択ですが、
「上半身と下半身、どちらが大事」でしょうか?
無理にでも選ぶのなら、心臓や脳などの重要臓器のある、上半身の方が大事ですね。
慢性的な冷え症になると人体も究極の選択をし、より大切な上半身を守ろうと、上半身だけを温めようとします。
その結果、下半身の血管は収縮し、血液が上半身に集まって、のぼせてしまいます。
これが、「冷えのぼせ」のメカニズムです。
食生活と冷え症
糖分と冷え症の意外な関係とは
あなたは、甘党ですか? 辛党ですか?
糖分を摂るとすぐに元気が出て、良い様に思いますが、実は「冷え症」の原因になっています。
マクロビオティックという食養生法でも、砂糖、チョコレート、乳製品、アルコールなどは身体を冷やす「極陰性食」とされています。
そして糖質過剰状態は主に血管に作用し、糖尿病、動脈硬化、アルツハイマー型認知症、骨粗鬆症、関節リウマチ、全身の老化などなど、挙げれば切りがないほどの多種多様な疾患の原因にもなってしまいます。
少量なら別に構いませんが、糖質の継続的な過剰摂取にはご注意ください。
そして、冷蔵庫から出した直後の冷えすぎた食品・飲料を摂るのはなるべく避けてください。
「冷蔵庫病」とも呼ばれる、様々な症状が出やすくなります。
自律神経と冷え症の関係
闘争と逃走の神経
自律神経には、交感神経と副交感神経の二種類がありますね。
交感神経は、「闘争と逃走の神経(Fight and Flight)」とも呼ばれ、不安・ストレスを感じた時に活性化します。
太古の昔、私たちは狩猟民族でした。
狩りに出て危険な猛獣と戦う時、命の危険から強い不安・ストレスを感じて活性化するのは、「交感神経」。
人類は、怪我による出血を減らす為、怪我をしやすい手足の先の血流量を交感神経によって減らすように進化してきたのです。
手足の先の血流量が減ると、当然冷えてしまいますね。
人類の文明の発達に比べ、生物の進化はとてもゆっくりです。
もはや不要な機能だと思いますが、現代の人間もやはり不安・ストレスを感じると、血管が収縮して「冷えて」しまいます。
仕事中に手足が冷えやすい場合などは、仕事中に気が張り過ぎているのかもしれません。
リラックスできるはずの自宅にいても、どうも落ち着かなかったり、不安感がある方もおられるでしょう。
そして、慢性的にストレスを受け続けると、自律神経の調節がうまくいかなくなり、慢性的な冷え症になってしまいます。
自律神経のバランスを改善するには?
「温・冷刺激」を交互に与えると効果的です。
入浴中に、温まった手足に30秒程冷水をかけてください。
慣れないうちは、微温湯でもOKです。
これを、お風呂から上がるまで数回繰り返します。
最後は、必ず「冷刺激」で終わってください。
温め過ぎて、感度の鈍くなった自律神経を鍛え直しましょう。
最初は辛いですが、数日すると、なんとなく冷刺激に慣れてきます。
心臓の弱い方は、注意しながら行ってください。
血虚(けっきょ)・貧血による冷え症
東洋医学の血虚とは?
血虚というのは西洋医学の貧血に近い概念で、血の量や質が低下した状態です。
体を温めるエネルギーが不足しがちになるので、どうしても冷え症になってしまいます。
普通はしっかり食べていればエネルギーは補給されるはずなのですが、胃腸(脾)の消化吸収能力が低下してくると、食べ物から効率良く栄養を得る事ができなくなってしまいます。
また、エネルギー不足になると精神的に不安になる事が多く、自律神経のバランスも崩してしまいます。
血虚・貧血による冷え症の改善方法
「アミノ酸の豊富な食事をして1時間後には、指先まで温まった」という実験があります。
アミノ酸とは、私たちの身体を作っているタンパク質の原料になっている物質であり、肉類や大豆などに多く含まれています。
そしてこのアミノ酸は、炭水化物(ご飯、パンなど)の5倍、脂質の実に8倍もの熱を生み出してくれると言われています。
さらに、アミノ酸の中でも「シトルリンとアルギニン」には血管拡張作用があることが分かっています。
冷えによって収縮してしまった手先や足先の血管を広げて、スムーズに内側から温まるように調整してくれます。
血行不良によって起きる、肩こりなどにも効果的です。
アミノ酸摂取は飲料が効果的
例えば風邪をひいた時は、食欲が低下しますね。
胃腸の働きが弱っていると、タンパク質の豊富な食事を摂っても、なかなか消化・吸収がされにくい事があります。
冷え症の方は胃腸の働きが悪い事が多いので、消化・吸収されやすい状態でアミノ酸を摂取することは、とても重要です。
日新製薬の「ビイレバーキング」は、牛の肝臓を分解した「リバーコンセントレイト」という成分が配合されています。
既に分解されたアミノ酸が液体の状態で入っていますので、消化力が弱っている方でも無理なく吸収することができます。
温まるだけではなく、栄養補給剤としてもとても優れているので、おすすめしています。
ここで、巡心堂の漢方薬による冷え症改善の症例を、二例ご紹介します。
一例目は足の冷えと浮腫みでお悩みの、大阪府柏原市の患者様の症例です。
血行不良からの冷え症と浮腫みの漢方薬症例 大阪府柏原市
長年の辛かった足の冷えと浮腫み
「足の冷えと浮腫みをなんとか治してください!」
と、大阪府柏原市在住の70代女性が巡心堂にご来店されたのは、残暑厳しい8月の終わり頃でした。
夏場でも、少しエアコンに当たるだけで、足がジンジンと痛みます。
足のむくみがひどく、とても歩きにくい状態で、靴下の跡もかなり付いていました。
お気の毒に、当薬局までも、なんとかたどり着いたという感じでした。
足を見てみると、両足の血管が赤黒く浮いて、明らかな血行不良が見られました。
近所のマッサージ屋さんで、リンパマッサージをお願いしたそうですが、痛くてとても無理だったとのこと。
足だけではなく、全身に原因不明の痛みがあり、常に重だるい疲労感もあります。
舌診してみると、白い苔が多く湿った感じでした。
これは、体の冷えと水分代謝不良を意味しています。
病歴や体質などを詳しくお聞きし、血流と水分代謝を改善し、体を温める漢方薬をお渡ししました。
冷え症・浮腫みなどが漢方で劇的に改善!
漢方薬を服用し始めて二週間ほどで冷えに改善が見られ、一ヶ月ほどで足が大分軽くなってきました。
そして、服用開始から二ヶ月半で、赤黒い血管も消え、浮腫みもすっかりなくなりました。
原因不明の全身の痛みもいつの間にか治ってしまいました。
「すごく歩きやすくなって、前より遠出が出来る様になったのが嬉しいです!」
と、大変お喜びでした。
根本的な体質改善にはまだ時間がかかると思いますので、継続して漢方薬を服用していただいています。
この患者様の場合、水分代謝不良による浮腫みによって血管が圧迫され、血行不良と冷えが発生し、それらが互いに悪循環を起こしていたものと思われます。
冷え症と一口に言っても、様々なパターンがありますので、詳細な体質分析が重要になってきます。
さて、二例目は低体温からの様々な症状にお悩みの、大阪府八尾市の患者様の症例です。
片頭痛と冷え性(低体温症)が漢方薬で一ヶ月で改善 大阪府八尾市
低体温に関連する様々な症状
患者様は、大阪府八尾市在住の30代女性です。
元々低体温で、平熱は35℃台。
子供の頃から、気持ち悪くなるぐらいの片頭痛にみまわれる事が有り、曇りの日は特に辛い状態が今も続いています。
手足が冷えて肩凝りがあり、やや軟便気味です。
子宮内膜症の疑いがあり、生理痛や排卵痛も酷く、全身に様々な症状が出てしまっています。
病院では、これらの不調は根本的には治らないと言われてしまうし、どうすれば良いのかと悩んだ末に当薬局にご来店されました。
漢方薬1ヶ月服用で低体温症や片頭痛などが解消!
病歴や体質を詳しくお聞きし、低体温症や血流を改善する漢方薬をお渡しして一ヶ月後。
「体温が36.3℃まで上がりました! 片頭痛も全く無いです」
との嬉しいご報告が。
聞けば、肩凝りや軟便、生理痛などもすっかり楽になったとのことです。
その後も漢方薬の服用を続けられ、あれ程悩まされた片頭痛などの辛い症状が全く無い、快適な状態が続いています。
低体温の弊害は色々とありますが、代表的なものは「血流の悪化と免疫力の低下」でしょう。
今回の患者様の様々な症状(片頭痛、肩凝り、軟便、子宮内膜症など)も、全て低体温症が引き起こしていたものだったと思われます。
体温を上げて血流を改善し、免疫力を向上・正常化する事は、将来かかるかもしれない難しい病気(自己免疫疾患やガンなど)の予防にもなり得ます。
漢方薬で大元の体質から改善していくという事は、現在の病気を治すだけではなく、今後の人生にとっても大きなプラスになってくれるはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「冷えは万病のもと」とも申しますが、本当にその通りだと思います。
たかが冷え症と侮らずに、適切な対処をしていく事がとても大切です。
冷え症や低体温症でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談くださいませ。
薬剤師 西田稔生