抗生物質乱用と耐性菌
最初の抗生物質「ペニシリン」が発見されて、今年で87年です。
医学の発展に貢献してきた抗生物質ですが、その乱用による「耐性菌」の発現が問題になってきています。
抗生物質を投与されると、ほとんどの細菌は死んでしまいますが、中には突然変異により、運良く生き残る菌(耐性菌)も出てきます。
周りの菌たちがいなくなった分、栄養素を独り占めできる耐性菌は、爆発的に増殖してしまいます。
耐性菌にも効くようにと、人類はまた新たな抗生物質を開発するのですが、細菌も突然変異を繰り返し、結局はいたちごっこになっているのが現状です。
きちんと使えば有用な抗生物質。
安易な使用は、絶対に止めなければいけません。
食事に含まれる抗生物質
ほとんど身動きできない状態で、まるで工業製品の様に飼育される牛、豚、鶏たち。
当然そんな不自然で不健康な状態では、病気になってしまいます。
それを防ぐ為に、エサに「抗生物質入りの成長促進剤」が混ぜられ、強引に予防している事が多いようです。
それを食べている人間には、影響がないのでしょうか?
なんと中国上海では、「約6割の児童の尿から、抗生物質が検出された」そうです。
中には、6種類以上の抗生物質が検出された例もあるとか。
おそらく、食肉や飲料水経由で体内に入ってしまったのでしょう。
中国の食に関連する抗生物質、耐性菌問題は、相当深刻な状態です。
既にWHOは、「抗生物質を成長促進剤として使用してはならない」という方針を表明しています。
しかし、未だに日本でも抗生物質入りの成長促進剤を使用しています。
効率主義、経済第一主義もいい加減にして欲しいものです。
では、病院や薬局からの抗生物質についてはどうでしょうか。
多用される抗生物質
中国では、近年までドラッグストアなどの一般薬局で、診察なしで抗生物質を購入することができたようです。
ちょっと風邪をひいたら、すぐ抗生物質を買って服用。
しかも、完全に治る前に自己判断でやめたりするので、耐性菌ができやすい状態でした。
さすがに今では、規制が強化されているようです。
基本的に、風邪はウイルス感染なので、抗生物質は効きません。
人体の免疫力で風邪は治るので、抗生物質が効いたように思うかもしれませんが、ウイルスと細菌は全く違うものです。
衰弱した高齢の方の肺炎予防という意味もあるので、全ては否定しませんが、すぐ抗生物質に頼る体質は日本の病院も同じようです。
私が調剤薬局に勤めていた頃は、風邪のシーズンになると
「抗生物質+咳止め+解熱剤+・・・」
などの、抗生物質を含んだお決まりの処方パターンをよく見かけました。
現在では減ってきていると思いたいですが、まだ漫然と抗生物質を処方する医師も多いようですね。
薬剤師 西田稔生