おそらく排卵誘発剤として一番使われているであろう「クロミッド錠50mg(クエン酸クロミフェン)」
同じ成分で、他社からもセロフェン錠50mg、クロミフェンクエン酸錠50mg「F」が出ています。
ほぼ同じ作用のお薬に、「セキソビット錠100mg」があります。
大まかに言うと、排卵は、
①脳の視床下部からGn-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)放出
②脳の下垂体からゴナドトロピンであるFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)放出
③卵巣を刺激し、排卵誘発
の流れで起こります。
クロミッドに代表される排卵誘発剤は、スタート地点の視床下部に働き、Gn-RHの量を増やします。
正確には、Gn-RHの放出をストップさせる働きをストップします。
ちなみに、hMG-hCG療法では、直接卵巣に働きかけます。
クロミッド錠の副作用
主に、4つの副作用があります。
頚管粘液の減少
精子が子宮の中に入れるように、排卵期には頚管粘液の分泌量が増えます。
精子が泳いでいく水の役割をしてくれる頚管粘液。
クロミッドなどの服用で分泌量が減ってしまうと、精子がちゃんと子宮内に到達できなくなってしまいます。
子宮内膜が薄くなる
受精卵にとってのベッドのような役割をしてくれる、子宮内膜。
妊娠に必要な厚さは、最低限6mmといわれていて、子宮内膜の厚さと着床率、妊娠率、出生率は密接に関連しています。
黄体化非破裂卵胞(LUF)になりやすくなる
黄体化非破裂卵胞(LUF)とは、基礎体温はちゃんと二相性があるのに、卵胞の破裂が起こらずに排卵が起きない状態です。
「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」や「子宮内膜症」などの人に多く、原因不明の不妊症の一因と考えられ、不妊治療中の方の15%前後が発症しているといわれています。
双子が生まれやすくなる
クロミッドには、複数の卵子を排卵させる作用もあり、副作用とは言えないかもしれませんが、双子が生まれる確率が少し上がります。
普通に双子が生まれる確率は1~2%。
クロミッド服用では、5%程度になります。
人間の生体活動は、絶妙なバランスの上に成り立っています。
例えばステロイド療法などでもそうですが、本来持っている自然なバランスを崩してしまうのは、良いはずがありません。
副作用の確率は、使用を続けるほど上がっていきます。
漢方で、無排卵月経を改善した症例も複数あります。
クロミッドで強制的に排卵させる前に、まずはしっかりと原因(生活習慣、食習慣、冷え、ストレスなど)を見極めるのが先決だと思います。
薬剤師 西田稔生